酸化亜鉛における光ゼーベック効果の観測
絶縁体にそのバンドギャップよりも大きなエネルギーをもつ光を照射すると価電子帯にあった電子が伝導帯に励起され、電子ホール対が形成されます。このように光励起された電子やホールはキャリアとして伝導に寄与します(光伝導)。しかしながら、光励起されたキャリアのより詳細な輸送特性、とりわけ熱電効果にどのように関わるかはこれまでほとんど分かっておりませんでした。
今回我々は紫外域のバンドギャップを持つ酸化亜鉛(ZnO)に対して異なるエネルギーの光を照射しながら電気伝導率とゼーベック係数の測定を行い、バンドギャップを超える紫外光の照射に対して光伝導現象と大きなゼーベック係数の変化を初めて観測しました。これらの結果は光によるキャリアドープ効果として半定量的に理解でき、光励起された電子ホール対の熱電輸送現象を理解する上で重要な指針を与えるものと期待されます。さらに光によって注入されたキャリア数は熱電変換物質において最適とされる1019 cm-3程度になっていることが分かり、光によるキャリア濃度制御という熱電変換における新しい方向性を見出しました。
本研究は先端的低炭素化技術開発(ALCA)の支援を受けて行われました。
"Photo-Seebeck Effect in ZnO"
by Ryuji Okazaki, Ayaka Horikawa, Yukio Yasui, and Ichiro Terasaki
J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 114722.
arXiv:1210.2498.
（左）光ゼーベック効果の概念図。（右）光照射による伝導度とゼーベック係数の変化。