結晶構造からみたLa(Co,Rh)O3のスピン状態
ABO3の組成で知られるペロブスカイト型遷移金属酸化物は、酸素八面体BO6を1つのユニットとした非常にシンプルな結晶構造を有します。しかしながら、その電気的・磁気的性質は実に多彩であり、そこでは遷移金属イオンのd電子が有するスピン・軌道自由度だけでなく、それらと格子系との結合も重要な役割を果たします。私たちは、微視的なスピン状態が未だ明らかになっていないペロブスカイト酸化物LaCoO3に注目しており、これまでにその磁気特性に対するRhやGaといった非磁性イオンの置換効果から、本物質のスピン状態に対する知見を得てきました。本研究では、粉末放射光X線及び中性子回折実験を通して、構造物性に対する置換効果の観点から本物質のスピン状態について調べました。観測された結晶構造の温度依存性やRh置換による変化は、高スピン・低スピン混在モデルでよく説明でき、本成果はいわばd電子を入れる箱である酸素八面体の変形や格子体積の情報からLa(Co,Rh)O3のスピン状態に対して理解を与えるものです。
"Spin State of Co3+ in LaCo1-xRhxO3 Investigated by Structural Phenomena"
by Shinichiro Asai, Ryuji Okazaki, Ichiro Terasaki, Yukio Yasui, Wataru Kobayashi, Akiko Nakao, Kensuke Kobayashi, Reiji Kumai, Hironori Nakao, Youichi Murakami, Naoki Igawa, Akinori Hoshikawa, Toru Ishigaki, Outi Parkkima, Maarit Karppinen, Hisao Yamauchi
J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 114606.
arXiv:1309.0658.
(図)LaCoO3の結晶構造とスピン状態。