酸化鉛における光伝導と光ゼーベック効果
限りあるエネルギー資源の有効利用は、持続可能な社会を構築する上で最も重要な課題の1つです。特に、太陽から降り注ぐ光エネルギーや人類の社会活動によって排出される膨大な廃熱は重要なエネルギー資源であり、最近私たちは光と熱を同時に使った新しいエネルギー変換（光ゼーベック効果・光熱電変換）の可能性を探索しています。
本研究では、可視域のバンドギャップを持つ酸化鉛(PbO)の単結晶育成を行い、その光照射下での電気伝導率やゼーベック係数の振る舞いを調べました。酸化鉛のバンドギャップよりも大きな光子エネルギーをもつ光照射によってそれら輸送係数は大きく変化し、光照射によって形成された電子ホール対がキャリアドープ効果として熱電輸送現象にも寄与していることが示唆されます。さらに、より詳細に輸送係数の光子エネルギー依存性を測定したところ、光励起されたキャリアの移動度が入射光の光子エネルギーに強く依存していることが分かりました。これらの結果は、単なる光ドーピングにとどまらず、より高効率の光熱電変換を達成するためには、波長選択した光照射を行う必要性があることを示唆してます。
本研究は、先端的低炭素化技術開発(ALCA)、公益財団法人三菱財団自然科学研究助成の支援を受けて行われました。
"Photo-Seebeck effect in tetragonal PbO single crystals"
by Partha Sarathi Mondal, Ryuji Okazaki, Hiroki Taniguchi, Ichiro Terasaki
J. Appl. Phys. 114 (2013) 173710.
arXiv:1310.2492.
（図）PbOにおいて室温で観測された光ゼーベック効果。