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名古屋大学 理学部物理学科

希土類化合物SmSで観測された一定電圧下における自発的電流振動

物質に強電場を印加すると、オームの法則から外れた非線形伝導現象がしばしば観測されます。残念ながら、その多くの原因は外因的な自己発熱効果ですが、一方で単純な熱の効果では説明が困難な非線形伝導現象もこれまでに報告されています。例えば、電荷密度波絶縁体や電荷秩序絶縁体では、一定の印加電場下で試料に流れる電流が振動する自己発振現象が確認されており、それらの物質群では電荷密度波のスライディングや電荷秩序の電流による融解現象などの興味深い非平衡現象が提唱されています。今回私たちは、希土類ナローギャップ半導体SmSにおける電場効果を検証し、低温において一定電場下で試料に流れる電流が自発的に振動する非線形伝導現象を発見しました。観測した振動の振る舞いは、サンプルをしきい電場を有するキャパシタと見た場合の充電放電モデルでよく説明できる一方、その放電メカニズムについては、小さなバンドギャップに起因する衝突電離や本物質が有する金属相への不安定性などのいくつかの要因が考えられ、今後の電場効果の研究の展開が期待されます。

本研究は、名古屋大学理学研究科同専攻の佐藤教授のグループ(M研)との共同研究です。

"Electrical oscillation in SmS induced by a constant external voltage"
by H. Takahashi, R. Okazaki, H. Taniguchi, I. Terasaki, M. Saito, K. Imura, K. Deguchi, N. K. Sato, and H. S. Suzuki
Phys. Rev. B 89, 195103 (2014).


(図)SmSにおける一定電圧下における電流振動現象。