アクセス
〒464-8602
名古屋市千種区不老町
名古屋大学 理学部物理学科

層状ロジウム酸化物が示す異常な常磁性

遷移金属酸化物が内包するスピンの自由度は、単にその磁性を記述するだけでなく、例えば銅酸化物における高温超伝導やコバルト酸化物における巨大な熱電係数などの、酸化物が示す特徴的な電子物性を理解するための重要な概念となります。そのようなスピン自由度が絡んだ物質の機能的性質に対して、これまでに3d遷移金属化合物を中心として盛んに研究が行われてきましたが、ルテニウムやロジウムなどを含んだ4d遷移金属化合物では研究例も少なく、その磁気状態の理解に関しても依然多くの課題が残っています。
 今回私たちは、3価のロジウムイオンが示すスピン状態に着目し、層状ロジウム酸化物LaSrRhO4の磁気・輸送特性の測定を進めました。酸素八面体中のRhイオンは、その6つの4d電子がt2g軌道を全て占有し非磁性イオンとして安定に振る舞うことが知られていますが、私たちは本物質に対する元素置換効果を系統的に調べ、この系では物質中の数%程度のRhイオンが確かに有限の磁気モーメントを示していることを見出しました。その磁性Rhイオンの割合は結晶のAサイトの乱れの大きさに依存しており、本結果は遷移金属イオンが示し得る多彩な磁気状態の1つの起源を与えるものとして期待されます。

本研究は、大阪大学先端強磁場科学研究センターの萩原教授のグループとKEKフォトンファクトリーの小林賢介特任助教、熊井玲児教授、中尾裕則准教授、村上洋一教授との共同研究です。

"Unconventional magnetism in the layered oxide LaSrRhO4"
by N. Furuta, S. Asai, T. Igarashi, R. Okazaki, Y. Yasui, I. Terasaki, M. Ikeda, T. Fujita, M. Hagiwara, K. Kobayashi, R. Kumai, H. Nakao, and Y. Murakami
Phys. Rev. B 90, 144402 (2014).


(図)LaSrRhO4における磁化曲線。